ロヒンギャ避難民支援から見る、社会的結束(Social Cohesion)の重要性が指摘され今後の展望がなされた (29/11/2019)

 東京外語大学の日下部講師が司会を務めた聖心女子大学でのセミナーに、国際移住機構(IOM)のジョルジ・ギガウリ代表が講演し、大橋正明教授と参加者からの質問に答えた。


 2017年8月、隣国ミャンマー・ラカイン州で発生した衝突により、70万人以上のロヒンギャ避難民がバングラデシュのコックスバザール県に流入している。2016年10月に発生した避難民および1990年代からの難民・避難民を加えると100万人近いロヒンギャの人々が、コックスバザール県内に設置されたキャンプ地やその周辺で、過酷な生活を送っている。現在、バングラデシュ政府を中心に多くの国連・国際機関およびNGOが現地で人道支援を行っており、生活環境の改善が進められているものの、まだ険しい道のりである。

 東京の聖心女子大学で開催されたセミナーで、IOM(国際移住機関)バングラデシュの代表、ジョージ・ギガウリ氏は、ロヒンギャ避難民がミャンマーに帰還する条件として、(1)安全の保障、 (2)ミャンマー国民としての市民権の授与、そして(3)教育、仕事、宗教的礼拝を含む基本的人権の確保を求めていると言及した。また、地政学的な要因により、イエメン、シリアなど世界各地で発生している人道危機に比べると、ロヒンギャ問題がメディアに取り上げられる頻度が少なく、右問題を風化させないことが、持続的な人道支援を実施するうえで、非常に重要な課題であると述べた。


 ロヒンギャ避難民への(ミャンマー国民としての)市民権の否定は、彼らのアイデンティティーの消失につながり、右問題の長期化を招く要因となる。今回の衝突に関わる関係者への公平・公正な裁きおよび説明責任が求められているが容易ではない。ただ、関係各国・国際機関などが協調すれば、時間はかかるかもしれないが、解決策が見つかると同氏は期待している。ミャンマー、バングラデシュ、両政府との良好な関係を築いている日本政府への期待も大きく、今後のリーダーシップに期待したい。

 本講演では、2017年6月よりIOMバングラデシュ、コックスバザール事務所にてロヒンギャ避難民支援に従事している、元日本国際平和構築協会事務局長の東山慎太郎氏が、参加者への日本語解説および補足説明を行い、現状と今後の展望について議論を深めることに寄与した。