一般討論に参加した60カ国の代表は、変貌する紛争と複雑で深刻な脅威に対処する必要性に関して認識を共有したが、国際平和と安定を成し遂げるのに必要な解決策に関しては相違した点も多々あった。
グテーレス国連事務総長は、紛争予防は新たな統合アプローチにおけるすべての政策的な努力の中心に位置しなければならず、開発は予防の最善の手段であると強調した。「2030持続可能な開発のためのアジェンダ」は、人権の尊重と社会的結束が平和な社会にとって重要であるとともに、平和な社会を構築すると述べた。女性の参加は紛争予防と平和の維持に不可欠であり、性的暴力は防止されなければならず、加害者の責任は追求されなければならないとした。事務総長は、ハイレベル仲介諮問委員会が支援する予防外交を含む予防の重要性を力説した。人間の安全保障の概念は、人間を中心とし包括的な枠組みとして、(紛争予防と開発を推進していくにあたって)有意義な基準を提供しており、最も弱い人たちを優先した行動を早期に取るべきだと述べた。安保理が活用出来る手段と方法を拡大し、予防のための資源を増やし紛争を避け平和を維持するために、より体系的に決断して行動できるようになることを提案した。そして最後に安保理の一致団結を呼びかけた。
安保理の12月の議長であった、日本の別所大使は、冷戦終結から25年後には、現代の複雑な国際平和と安全保障への脅威が増えていると指摘し、大量破壊兵器の拡散、テロの拡大、非国家主体や国家間の犯罪組織などの非伝統的な課題が平和と安定に新たな脅威をもたらしていると述べた。安保理はこれらの国際的な平和と安全への複雑な課題に取り組んでいるが、国内あるは地域に限定した枠組みで対処してきたが、複雑な現代の脅威には人間の安全保障のアプローチが非常に重要であると強調した。人間の安全保障の概念に基づくアプローチは、不安定性の分野横断的な理解に基づいて、個人を中心に置いており、脅威と挑戦の幅広い理解をもたらしましたと説いた。
その後の一般討論では、60カ国もの国の代表が、国際平和と安全への変化する課題に適応する必要性を強調し、事務総長の組織の安全基盤およびその他のイニシアティブの改革を歓迎した。多くの人々は、気候変動、非国家武装集団、過激主義とテロリズム、貧困と開発不足を含む不安定と紛争の根本的な原因を取り上げる必要性を強調した。
予防の重要性を強調し、早期に国際平和と安全への脅威に取り組むために、安保理がより創造的に責任を全うすることを要請した。そして、他の国連機関や地域および準地域組織との協力と調整を強化するよう求めた。深刻な国際犯罪に対する不処罰の傾向を阻止することが重要であると述べた。そして一部の代表者たちは、国際刑事裁判所(International Criminal Court)との効果的な協力の重要性を強調した。
欧州連合と北欧諸国が共有する見解をスウェーデンのオロフ・スクーグ(Olof Skoog)大使が紛争の要因を掲げた。貧困の蔓延、食糧不安、国境を越えた組織犯罪、脆弱ガバナンス体制、腐敗、人権違反と不平等の増大や気候変動などが紛争の原因であり、国連の安保理事会がこれらを認識して、これまで以上に予防策を立てることが重要であると指摘した。そして根本的な原因と紛争の加速的な増強に対処する包括的な戦略がなければ、紛争の防止は不可能であると強調した。事務総長は国連改革を継続的に行う必要性があり、国連システムに属する多くの機関が共同して紛争の要因を分析し統合された戦略を立てられる能力強化が重要であると述べた。またジェンダーの視点を長期戦略に取り組んでいく必要性を説いた。
安保理の常任理事国であるアメリカ、フランス、英国は、2030維持可能な開発課題の重要性に合意するとともに、国家の統治能力の貧弱さや政府の人権軽視の態度が問題であるとした。アメリカは国連のPKO部隊の質も問題であり、国連の分析力を著しく向上する必要性を指摘した。そしてアメリカは強力な力を行使できる国であり、国連が紛争予防を迅速に出来る為に支援するとの意志があることを示唆した。フランスは、国際平和と安全保障問題はグローバルな性質のものであり、グローバルな対処が必要でると説いた。そしてテロリズムなどには、政治、経済、社会、文化の全面から多国間そして地域的な組織をもって対処すべきであると述べた。英国は、新たに台頭してきた紛争は、インターネットや移民の従属化により加速したとの見解を述べた。
ロシアと中国も、2030持続可能な開発課題の重要性を指摘した。そして国家の独立を尊重して、外部からの介入は避けなければならないと強調した。ロシアは国際的な平和と安全への統合的な戦略を立てる観点からは、総会、経済社会理事会や他の国連機関が平和と安全、社会経済的および環境問題の関連性を検討することは有益であると述べた。それと同時に、安保理は安全保障問題に専心すべきで、開発や環境問題などを扱うべきでないと訴えた。中国は、国連憲章の原則をしっかりと守ることが必要であり、新たに浮上してきた試練には、憲章の原則は守ることで、対処すべきであると論じた。国際平和と安全を維持することが理事会の第一の責務であり、その権限はすべての加盟国によって守られるべきであると説いた。国連は公正でなければならないし、安保理は、国家主権、領土の完全性、国家の独立性、そして各々の国が自らび社会構造を選ぶ権利を国際社会は尊重しなければならないと訴えた。貧困や開発問題が紛争の根本的な原因として解決されず、気候変動などの脅威が絶えず拡大していることに留意し、2030開発目標とパリ協定の完全実施を求めた。
発展途上国の中では、トルコは独自の見解を鮮明に表した。国連のすべての分野での「柱」すなわち部門が大きな課題に直面していると指摘し、いまや米国を含めてどの国も、一カ国で平和と安全保障にかかわる問題を解決する能力はなくなったと宣言した。国連は国際社会が直面した課題に対処するために大幅な改革が急務であると述べた。改革の主な目的は、政治的解決策の優先順位をつけながら、平和維持活動の有効性を高めることが重要であると述べた。危機予防は不可欠であり、紛争後の状況での危機の再発を防ぐことも不可欠であるとした。事務総長の「平和外交の高揚効果」(surge in peace diplomacy)イニシアチブと予防柱の改革は重要であると同調した。安保理は、新たな危機に対するタイムリーかつ適切な対応を取ることが今まで出来ていなかったと断言した。その主な理由として、拒否権の行使であり、この無責任な行動が安保理を無能化したと批判した。テロ、気候変動、水、人身売買を含む紛争の数多くの要因の根本原因に取り組むには、安保理以外の国連機関とのさらなる協議が重要であると強調した。
アフリカ諸国はグテーレス国連事務総長の改革案を支持した。アフリカの主要国であるエチオピアは、新しく複雑な課題に対処するためには、包括的で革新的な方法とともに新しい考え方を取り入れる必要であると述べた。そのためには、国連機関と地域組織との間に強化されたパートナーシップが必要であるとした。事務総長のビジョンは、国連の改善された計画方法と予算策定による統合された能力の創出を可能にしると判断し支援した。現地での国連の平和活動と長期的な問題解決策の施行を支援するとした。複合的なクロスピラーアプローチは勧められるが、既存の業務の義務が変更されるべきではないことを意味すると指摘した。紛争の要因に取り組むために重要であるが、安全保障理事会は、他の機関の責任を受け持つようなことはすべきでないと指摘した。安保理は、今まで適切に対処されていなかった国家間の関係を定めた国際法の原則などを順守する為に自らの責任を果たすことに専念すべきであると説いた。
南アフリカは、紛争の性質は国家を創設した指導者が想定したものではないことを強調した。現存する紛争は主に加盟国の内戦と国境越えた脅威に集中してきた。残念なことに、世界は変わったが、理事会はほとんど変わらなかったと指摘した。その為に、常任理事国による安保理の麻痺が、シリアの部隊だけでなく、イスラエルとパレスチナの間の状況に対する意味のある行動の欠如をもたらし、人類の命運を犠牲にする結果になったと断言した。安保理の作業方法が漸進的に改善されたが、そのような進歩は包括的な改革の必要性を克服できるものではなかった。安保理が現実の世界をより適切に反映すれば、複雑で現代的な課題に対処する上でより効果的な機関になれると説いた。非差別的な意思決定と狭義の国家安全保障上の利益ではなく、集団的で包括的な対応策が、危機を克服できる糧でなると説いた。
エジプトは、国際連合を通じて調整され、根本的な原因に焦点を当てた革新的なアプローチが、国際的な平和と安全への相互に関連した複雑な課題に対応する手段であると示唆した。。紛争や潜在的な紛争の分析において、事務局は事例ごとに各状況の性質を考慮しなければならない。平和構築委員会の有効性を強化し、危機にある国々の安定のための基盤を立てるために安保理と協力することができるようにする必要があると説いた。国境を越える組織との緊密な調整を通じて、国境を越えた課題に対応する必要性があると指摘した。新たな課題に直面することのできる機関が建設されるように、国際社会の支援を得て普遍的な権利を確保しなければならないとした。そして国連の各機関は、それぞれの責任を適切に遂行し、重複しないように、国家の権限を尊重しなければならないと説いた。
日本と共に非常任理事国として重要な地位と責務を果たしてきたブラジルは、安全保障と開発の相互関係が複雑でかつ微妙である点を指摘した。貧困と不平等は、国内の不安定要因であり緊張を増すかも知れないが、必ずしも国際平和と安全を脅かすとは限らないと説いた。地政学的な対立、軍事的アプローチ、そして一方的な力の使用は、より深刻な地域的および世界的な不安の源であったことは確かであった。しかし現代の紛争に与える複雑でダイナミクスな要因は一般化すべきではないと勧告した。成功した平和維持活動は、安全保障と開発の間の建設的関係を証明した。最近のハイチにおける国連の経験は、13年にわたってハイチの国連安定化ミッション(MINUSTAH)がより安全で安定した環境造りに貢献し、平和を促進に寄与したことは意義があると述べた。
アジア諸国は紛争予防において、自らの経験に基づいて開発の重要性と強調した。インドは、すべての人々の持続的発展に取り組み、基本的な見直しをして、格差を縮小する必要性を強調した。安保理は、テロ・ネットワークのグローバル化に重点を置く必要があるが、テロリストの個人や団体を示す必要性があるが、制裁委員会は具体的な進展を達成できなかった。競合する国家間の権力のバランスを維持するために、現在の国際社会を反映していない安保理は、何十年にもわたって想定外の変貌する課題を処理することが出来ないできた。 「合法的ではなく、信頼性を失った手段は、救いの希望にはならない」と述べ、現在行われている公開討論などの「スピーチ行為」は、何十億人もの人々の生命を維持するには何ら影響を与えていないと断言した。
インドネシアは、紛争がこの数年間に3倍に増えたと指摘し、政治外交と紛争予防の緊急性を指摘した事務総長の要請を強く支持した。紛争の根本的な原因に取り組むことができないことが紛争の原因となり、国連が包括的に紛争を点検していることは奨励されるべきであると述べた。組織の平和と安全保障の柱を再構築するという事務総長の提案が成功し、平和の連続体との関与がより効果的かつ迅速に行われたことは不可欠であるとした。さらに、安保理は国際法、人権法、人道法の原則を完全に遵守しなければならない。それは賢明でなくてはならず、各々の国家や政治的な視点によって決まらなければならないと述べた。その例として、パレスチナの問題を挙げた。安保理に不関与な態度は、現地に壊滅的な結果をもたらし、解決策をより複雑にしてしまった。さらに、安保理は、国際的な平和と安全保障の課題を独力で解決することはできず、軍隊や警察部隊を貢献している国々との協力が必要であると述べた。