長谷川理事長は、日本が「人間の安全保障」の概念を推進していくことは重要であると述べた。 (28/10/2021)

 討論を総括するにあたって長谷川祐弘理事長が2点述べた。第一に「人間の安全保障」という概念を1994年のUNDPの人間開発報告書で提唱したマハブール・ハック氏にとってどのような意味があったかを説明した。ハック氏は人間を開発の中心として捉え、経済成長は人間社会の究極の目的ではなく、人間自身の生命と生活の向上のための手段として捉えられるべきであると思われた。そして人間は、あらゆる生命体が依存しあう地球全体の自然体制を擁護すべきであると説いた。その為にハック氏は「世界社会憲章」を作成して、国連に「人間開発(経済)安全保障理事会」を設立することを提案した。第二点は、「人新世のリスク」に対して「人新世のソルーション」を考慮するにあって、人口知能(AI)の驚異的な発展に沿って、アルゴリズムの機能が急速に向上して、専制国家では市民の生活そして生命をコントロールする手段となった。自由民主主義国家でも巨大な企業が消費者である市民の生活のみならず声明に著しく影響を与えるようになってきていると述べた。新たな世代での新たな脅威に人間がどのように対処していくべきかを考えた場合に、脅威の根源が二つあると述べた。その一つは、人間は技術革新して創造力あるいは破壊力を持った手段を獲得してきており、その一例として原子力が社会に多大な恩恵をもたらす可能性があると同時に、人間社会を破壊することもできることを挙げた。長谷川理事長は、人間に脅威をもたらすもう一つの要因として、人間の貪欲性を挙げ、新たな世代の人々にとっても脅威を生み出すことになると説いた。そして、人類が自ら内蔵している脅威から、人々の生命と安全を確保するために、日本が「人間の安全保障」の概念を推進していくことは重要であると述べた。