2010年度法政大学法学部
「国際機構論」
■テーマ :「総括講義」
■講 師 :長谷川 祐弘教授 法政大学法学部教授
■日 時 :2011年1月11日(火)13:30~15:00
■場 所 :法政大学市ヶ谷キャンパス 外濠校舎 407教室
■作成者 :橋本佳奈 法政大学法学部国際政治学科2年
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<講義概要>
1.国際機関の役割と意義に関する問い
グローバリゼーションの中で国際機関の役割は変わってきている。私たちが国際機関について学んでいく上で、4つの大きな対象が存在する。引き続き最も力の強い、国家の主権というものが世の中を治めている。国家の利益を追求していく中で、主要な行為体になっている。同時に、概念として見た場合には、国際社会、よく言われるのは国際関係論というのがある。国家と国家の関係があって、そこにおいて国際機関が役割を果たす。また、EUやASEANのような地域社会が存在する。そしてもう一つは地球規模課題が存在する。主権国家というものは、自分たちの独立と主権というものを絶対なものとしている。主権国家は独立を維持することを望んでいるにも関わらず、なぜ自らの行動を規制する国際機関を創設したのか。グローバル化が進む中で国際機関の役割は増えてきている。国家利益を追求している国々があって、それを調整している国際社会があって、それが今、一歩前進している。要するに、グローバルガバナンスが必要とされている。
2、歴史的背景
1)ウエストフェリア体制
17-18世紀にかけて、ウエストフェリア体制ができ、国家の主権が確立された。国家での政治、経済、文化活動が国家間のものとして増えてきた。19世紀にあった欧州の協調は今のG7、G8またはG20に繋がっている。初めて常設機関が創設された。アメリカ同様、欧州の協調も他国支配の体制の基にあり、Balance of Powerが台頭した。しかし、これは、集団安全保障を目的に創設された国際連盟の意義とは概念的に異なる。国際社会全体が守る秩序、規範を作る。規範や基準を作るには、理念が必要である。この理念というのは、自由民主主義の理念である。国際法の基に入って、法律化される。この時代は主義が力を握っていた時代であった。共産主義者の労働者や人権を保護するべきであるという思想も入っている。国際連盟というのは、世界全体の地球社会というものを想定されて創設されたという点において欧州の協調とは異なる点である。
2)国際連合創設の理念
国際連盟の崩壊から学び、大国参加と同時に彼らに拒否権をも与えた。これは現実主義者の思想である。力を持っている国を認めて、拒否権を与えるべきだという考えである。しかし、新現実主義者は、集団安全保障システムをとって、大国も含めたメンバーすべてが枠組みに入ることを唱えた。また、理念の一つである植民地の独立の助成というのは、民族自決権を認める国家平等論である。
3.国際機関の役割
1)外交の場
国際機関は国家間の交渉の場だけであるのだろうか。例えば、デンマークで行われたCOP15の様に、例えば温暖化の問題を解決するために多くの国が集まって交渉をしたように、交渉の場のみであるのか。しかし、国際機関を通じて外交が行われているということと同時に、国際機関に対する外交もまた必要である。現在最も重要なことは、地球規模の課題というものが増えており、国際機関を利用して、それらの問題を解決しなければならないことである。
2)現実主義の見た国連の役割
国際機関は大国の道具の一つであり、先進国やアメリカのような大国が国際機関を利用しようと思わない限り、利用されることはないという見方をする人も一部いる。この他には、国際協力の推進役、主権国家共同体の知事、世界社会の構築者、そして正当性を与える組織だという考えもある。