宣言文では地球温暖化、感染症の拡大、核兵器の拡散、難民問題、国際テロ・人身売買など国家の枠組みを超えた地球規模問題に対しては、思想信条、人種、国家の立場の違いを超え、知識と力を合わせて進むべきと謳った。
国際機関、政府機関、地方自治体、経済界、宗教界、学界、学生などがグローバル・ガバナンス推進委員会で自由討論という方法で具体的な提言などが参考人によってなされ議論された。発言者と見解は以下の通りです。
ウィーン国際機関日本国政府代表部大使、国連本部で軍縮担当次長を務めた後に、内閣府原子力委員会の委員、財団法人日本国際問題研究所軍縮・不拡散促進センター所長、外務省参与、核不拡散・核軍縮に関する国際委員会の諮問委員を務められた、阿部信泰大使は世界で人類の生存を犯す二つの大きな問題は地球気候の温暖化と核戦争の可能性であると述べ、ローマ教皇が説いているごとく、核兵器を無くすことが最重要課題である。第2次世界大戦後の75年間近くにわたり、核兵器が使用されずにいたが、専門家たちはその可能性が増えていると言っている。この世界連邦日本国内委員会が創設70周年を迎えるにあたって、核兵器撲滅がただ単なる理想ではなく、どのようにして実現するか、日本の皆さんが各々の果たせる役割を考え、務めていくことを願っていると述べた。
国際連合諸機構合同監査団(JIU)監査官、国連行財政問題諮問委員会(ACABQ)委員、国連で在ウイ−ン国際機関日本政府代表部公使、在コスタリカ特大使を歴任した猪又忠徳大使は日本では官民一体となっての取り組みで実施されるようになってきたことは喜ばしいが、まずは国連事務総長が進めているSDGsによる紛争の根本原因の除去と予防とSDGsに依拠した予防戦略構想の後押しをすることである。SDG全目標・指標に則した悉皆調査データ構築による「取り残された人」の状態を「見える化」して、グローバル・ガバナンスの基礎の構築をすべきである。そして、これまでのSDGsに関しての国内の官民啓発優先のSDGs施策を是正して、グローバルな問題の解決にむけた持続可能なODA施策への活用・転換を提言された。
国連法務部、中東PKOを経て、外務省ジュネーブ代表部公使、フランクフルト総領事等を歴任し1984-90年には国連事務次長補 (Assistant Secretary General)として、カンボジア人道援助担当事務総長特別代表と国連人口基金事務局次長を各3年務めたられた功刀達朗氏が、軍拡競争が激しさを増しており世界の軍事費は、今や冷戦のピーク時の年額1兆米ドルの少なくとも3倍以上に達し、世界を破滅に導く可能性があると指摘された。2017年7月に国連で採択された核兵器禁止条約には、採択時に122ヵ国が賛成票を投じ、今日までに70ヶ国が署名し、23ヶ国が批准しましたことを指摘して、日本もこの条約を推進していくべきであると語った。
国連行財政諮問委員会委員、 国連総会第5委員会議長、JIU国連システム行政監視機構委員長、国連事務次長補(国連ハビタット事務次長)を歴任した久山氏は、国際連帯税は、SDGs推進に当っての資金不足を補う措置として意義がある。一番大切なのは限られた資金の有効活用であり、各ゴールの実施に当って紛争防止視点(ゴール16)との連携をも忘れないことである。尚、本日の会合は世界連邦国内委70周年式典として行われているが、国連改革との関連においても、世界連邦といったものの意義を感じている。
内閣府経済社会総合研究所や日本経済研究センター主任研究員を務められた外務省国際協力局の桑原進審議官は、日本政府が,内閣総理大臣を本部長とし,全閣僚を構成員とするSDG推進本部を設置し,SDGsの推進に政府一体となって取り組んでいると述べた。そして、他の参考人から言及があったように,現在,SDGs実施指針を改定中であり,パブリックコメントをいただいたところで、今回の議論も踏まえてさらに改定に取り組んでいくと語った。
アライアンス・フォーラム財団 代表理事補佐は、SDGsがMDGsとは異なり、多層的・多面的に展開されていることはencouragingである。経験的に、目標実現の為には「民」主体/「官」支援の有機的な連携が必須であると語った。
京都造形芸術大学 教授・SDGs推進室長で、世界連邦日本宗教委員会の事務総長であり、石清水八幡宮の田中朋清権宮司は人類の持続可能性や世界平和構築に大きく寄与する可能性を秘めた『日本文化(日本各地で育まれてきた地域文化や生活文化)に内在する知恵や価値観』を共有・発信することを目的とする日本国政府による包括的な枠組み整備が行われることのぞみます。そして、世界中の文化に内在する人類の持続可能性や世界平和構築に寄与する知恵や価値観の共有・発信を目的とした国際連合における包括的な枠組みの整備を奨励します。
日本宗教連盟評議員の猪子恒氏は、宗教者として、平和は心の中にあるということを世の中に広めていきたいと思います。
そして、第2次世界大戦直後の日本の指導者が思った世界連邦が必要であることを再確認すべきであると述べた。
国連機関、外務省、内閣府国際平和協力本部事務局の職員としてケニア、べルギー、インドネシア、イラク・ヨルダン、アフガニスタンなどで勤務し、現在は国際移住機関(IOM)駐日代表である佐藤美央氏は人の移動は、国際社会全体で取り組むべきグローバルな開発のアジェンダである。SDGsの目標10.7に規律ある移住政策の促進が含まれている。自然災害による被災民、労働移住、人身取引の被害者、難民等、人の移動には様々な形があり、日本社会にとっても身近な課題である。誰一人として取り残さないというSDGsの主旨を重く受け止め、IOMはSDGs推進に向けて日本と積極的に協力していきたいと述べた。
国連広報センターの千葉潔氏は、SDGsは国連総会が採択した持続可能な開発目標ですが、日本の国内に広く認知され行動に移されていることは有意義です。来年には小学校の教科書に記載され、その後には中学校そして高校でも取り入れられると聞いております。SDGs達成をめざす「行動の十年」へと向かう中、弊センターとしては広報に力を注いでおり、より多くの日本人がSDGsに関して認識を深められるように努力をすると述べた。
【UNDP駐日代表の近藤哲生様からの祝辞メッセージ】UNDPではシュタイナー総裁が、アントニオ・グテーレス国連事務総長の下で国連開発グループの副議長を務めており、SDGsの実現に向け、連携する国連諸機関と協力し、合同で力を発揮すべく、国連開発システムをサポートしております。世界連邦国会委員会が創立70周年を迎えるにあたって、国会および日本政府が、SDGs達成の為に努力されていることに感謝し、今後ともより一層SDGs推進に尽力していただければと考えております。
参考人の討論の後に司会を務めた長谷川祐弘グローバル・ガバナンス推進委員会の座長が要点を纏め、衛藤征士郎会長が会議の終了の言葉を述べた。
長谷川祐弘氏はSDSsの目標を達成する為には、指導者と市民の卓越した志と心構えが必要であると述べた。阿部大使や功刀教授が核兵器撲滅と軍縮を最重要課題として指摘されたが、長谷川祐弘氏は、現在の国家主権主義を過度に信じている指導者が、地球社会に対する脅威を醸し出していると説いた。国際社会におけるこのような脅威感を乗り越えるには、150年前に日本で若い武士や知識人が明治維新によって成し遂げたガバナンスのシステムを変えることであると述べた。黒船が日本を破壊する可能性があったと同じように、核兵器、気象変動そして人口知能(AI)は国際社会そして人類は破滅する可能性がある。
国連大学のマローン学長が述べているように、日本は成熟した安全で安心な社会を築いたが、それは日本人の志が良かったからである。多民族国家である米国と異なり、日本では政治家が「日本第一主義(Japan First)」を唱えなくても、国民が一致団結して国益を守っていく気持ちを抱いている。このようなアプローチは短期的には効果があるかも知れないが、日本憲法に謳われているごとく、国際社会で「名誉ある地位」を得るには、日本は国際社会のあらゆるところで安全と安心が確保されるように、明治維新を成し遂げたような志を持って貢献すべきである。長谷川氏は、卓越した志そして心構えが大事であると力説した。
● SDGs推進大会宣言文を朗読
また山内建人君(学生事例発表・世界連邦学生代表・上智大学学生)、藤沢茉由さん(横浜市立大学学生)、南亜伽音さん(横浜市立大学学生)が、学生活動の事例を発表し、山本由紀子世界連邦青年会議事務次長補がSDGs推進大会宣言文を朗読した。
私たち世界連邦日本国会委員会は、本年12月20日に創設70周年を迎えます。
この約70年間で国際情勢は大きく変化しました。冷戦終結により、大国間による全面核戦争の懸念はひとまず解消しました。しかし、地球温暖化、感染症の拡大、難民問題、テロあるいはタックスヘイブンなど、国家の枠組みを超え、世界全体で対処すべき課題がますます増加しています。
それらの課題に対応するための国際機関・国際合意が発展する一方で、世界全体・地球全体への利益を軽視し、国益のみを過度に主張する政治指導者が生まれていることも見過ごせません。
私たちはここで、世界全体・地球全体の存続があってこそ国益あるいは個々の基本的人権が保障されるのだということを確認します。今やどの国も他の国との良好な関係なくして生きることはできません。私たちは、国家・民族・宗教の独自性を尊重しつつ、全世界の人々が共生できる世界の実現に邁進します。
SDGs(持続可能な開発目標)の達成期限は後10年と少しです。「誰一人取り残さない」がSDGsの根本理念です。日本国憲法には、「全世界の国民が、ひとしく恐怖と欠乏から免かれ、平和のうちに生存する権利を有すること」がうたわれています。これらの理念を実現するための地球規模の制度の確立こそが世界連邦運動に他なりません。
世界連邦日本国会委員会創設以来約70年の運動の中で、戦争体験者をなど多くの人々の後押しを受け、2005年には衆議院、2016年には参議院においていわゆる「世界連邦国会決議」がなされました。この決議の中では、わが国が率先垂範して人類の平和のために努力すること、国際機構の改革強化、国際法の発展、核兵器廃絶など軍縮外交の推進、人間の安全保障の実現を含む世界連邦実現への道の探求に努めることなどがうたわれています。これらはSDGsとの理念とも正に合致しております。
この決議を「絵に描いた餅」にしてしまってはなりません。政府がSDGsに掲げる各目標を達成し、地球温暖化対策・軍縮・核兵器不拡散・難民問題などの地球規模問題に対応するにあたっては、世界連邦国会決議を意識し、決議を持つ国としてふさわしい行動をとることを私たちは要請します。
本日この会場には、国会議員が党派を超えて集まり、さらに市民社会、経済界、宗教界、文化人、地方自治体など、官民連携で大会に臨みました。地球規模問題に対しては思想信条・性別・立場の違いを超え、力を合わせて進めていくことがこの運動の神髄だと思います。私たちは、共に手を携え、全世界の人々が共生できる世界の実現に邁進することを誓います。