【Global Governance】5月12日 吉崎知典 防衛研究所研究部第5研究室長

522011
2010年5月12日のGlobal Governanceの授業では、吉崎知典・防衛研究所第5研究室長による「グローバルな紛争処理」について講義がありました。
 まず講師は、日本の自衛隊の役割を学生に問いかけつつ、現在の紛争で自衛隊が果たすべき役割は、狭い意味での「自国の防衛」を遥かに超えて、アジア太平洋地域における平和と安定、国連PKOへの参加、国際緊急援助、人道復興支援といった幅広い活動を含むものへと変化した、を指摘しました。そうした多様な自衛隊の役割は、国際紛争が構造的に変化した結果として生まれました。現代の紛争は「前近代、近代、ポスト近代」という様々な特徴を持っています。国家を防衛して国益を確保するという発想は「近代」的なものであり、東アジアでは未だに中心的な発想です。ですが、テロや海賊行為は国家破綻という「プレ近代」の側面を持っています。その「プレ近代」の紛争に対して国際社会が介入するのは、主権国家への「干渉」ですので、「ポスト近代」的なものと言えます。このように、それぞれの時期に軍隊や国際機関が果たすべき役割は実に多様になります。例えば、スーダンやソマリアという「プレ近代」の紛争では必ずしも「日本の国益」という視点からだけでは説明ができず、むしろグローバルな紛争処理の一環として国連PKOや海賊対処が求められている、という流れが明らかになりました。
 こうした平和構築の事例と併せて、核不拡散をめぐる最近の動きも紹介されました。主要国は核抑止や「核の傘」を保持するという「戦略的利益」を重視しますが、一方で、「核なき世界」を実現するための平和研究の視点も重要です。こうした戦略研究と平和研究の双方のアプローチを意識しつつ、国際問題を複眼的に捉える必要がある、というのが本講義の結論でした。(臼井崇人)