2009年2月3日
報告者:法政大学法学部国際政治学科三年
古市美奈
安全保障国際シンポジウム
平和構築と軍事組織
−21世紀の紛争処理のあり方を求めて−
主催:防衛省 防衛研究所
場所:ホテルオークラ
時:2009年2月3日
プログラム:
【基調講演】
「平和構築における軍事組織の果たす役割」
マイケル・クラーク (英王立総合軍防衛研究所<RUSI>所長)
「文化組織の強化」
ハンス・ビネンダイク (米国防大学研究担当副学長)
【第1セッション】岐路に立つ国際平和活動
議長:吉崎 知典 (防衛研究所研究部 第5研究室長)
「岐路に立つ国際平和活動−英国の視点」
ジョナサン・イール (英国王総合軍防衛研究所<RUSI>研究部長)
「平和構築活動−地域問題に対するオーストラリアの視点−」
ジェームズ・コットン (オーストラリア国軍士官学校<ADFA>教授)
「平和構築における自衛隊の役割−政策の変遷とその背景になった論点−」
山口 昇 (前陸上自衛隊研究本部長)
コメント
長谷川 祐弘 (法政大学教授/元国連事務総長特別代表<東ティモール>)
片山 善雄 (防衛研究所研究部 第2研究室長)
【第2セッション】安定化作戦と同盟の管理
議長:小野圭司 (防衛研究所研究部 第3研究室長)
「安定化作戦と同盟の管理−ドイツの視点」
ピーター・シュミット (ドイツ科学政治財団<SWP>)
「安定化作戦と同盟の管理−フランスの視点」
エティエンヌ・ドゥ・デゥラン (フランス国際関係研究所<Ifri>)
「平和構築における軍事組織の役割−日本の視点」
吉崎 知典 (防衛研究所研究部 第5研究室長)
コメント
上杉 勇司 (広島大学准教授)
【第3セッション・総合討議】平和構築における軍事組織の役割
議長:吉崎 知典 (防衛研究所研究部 第5研究室長)
小野 圭司 (防衛研究所研究部 第3研究室長)
コメント
篠田 英朗 (広島大学准教授)
2009年2月3日,「平和構築と軍事組織-21世紀の紛争処理のあり方を求めて–」(The Role of the Military in Peacebuilding : A New Approach to Conflict Resolution in the Twenty First Century)という安全保障国際シンポジウムが防衛省防衛研究所共催にてホテルオークラで行われ、当ゼミの長谷川教授が参加しました。
今回のシンポジウムへ、長谷川祐弘教授は元国連事務総長特別代表として招かれ、「岐路に立つ国際平和活動」(Peace Operations at the Crossroad)と題して、平和構築活動の経験を基に平和構築における軍事組織の役割についてコメントをしました。
【基調講演】
平和構築における軍事組織の果たす役割 マイケル・クラーク氏
軍事組織はすべての平和構築で欠かせない役割を担っている。冷戦後、軍事組織はハイチ、パナマ、ソマリア、ボスニア、マケドニア、東ティモール、ソロモン諸島、コートジボワール、シエラレオネ、アフガニスタン、イラクでの平和構築に関わっているその結果、比較的成功した例や、完全な失敗例もあるが、ほとんどの例は中間である。こういった紛争事例から、軍が関与することによって起きることについての教訓を学ぶべきである。それらは以下のようなものである。
l 軍が関与することにより、他の組織は軍に任せる傾向があり国際的な支援に穴が空きやすい
l 現地の住民に依存体質が生まれる
l 経済・社会・政治分野における適切かつ段階的な復興に似た者が生まれるが、実際には復興プロセスを妨げてしまう
これらの要因として、政治的に機微な活動に備えて適切な訓練を受けていない部隊に対して課題な要求をしていることが挙げられる。紛争後の復興支援は専門的訓練を受けた部隊が担うべきものであり、そうした部隊は自らの技量や訓練の成果を存分に発揮することが期待できるであろう。
これまでも紛争事例から実務的な教訓を引き出すため、以下の努力を重ねている。
l 訓練の見直し
l 復興に向けた手続きを国際社会の対応に一致させ、問題に対して包括的な取り組みを引き出すこと
l 効果重視の軍事作戦、元兵士の武装解除・動員解除・兵士復帰(DDR)、治安部門改革(SSR)をガバナンス、開発、持続可能な社会の実現に向けた要請への結びつけ
こういったことを通じ、実績を挙げ、平和構築における軍事組織の果たす役割を理解できるのである。
最後に、平和構築に軍事組織が関わるにあたって、政治的原則について重要な問題について述べる。それは、平和構築にかかわる課題において、政治的関与の代替として軍を使用してはならないということである。もし仮に軍が平和構築に必要であるならば、軍はその平和構築のすべての段階において、なんらかの形で本質的な存在であることになる。そして、軍が展開するならば、緒戦から十分な規模で部隊を配備し、その後、徐々に減らすべきであり、その逆はあってはならないのである。
文化組織の強化 ハンス・ビネンダイク氏
今日米国において、文民組織と軍事組織が現地で複合的な活動を実施する場合、明らかに文民組織側が適切な能力を欠いている。こういった活動の例としては、安定化および復興(S&R)、人道・災害救援・非正規戦および内乱鎮圧活動などがあるイラクやアフガニスタンあるいはニューオーリンズでの活動から文民組織の能力欠如が改めて認識されるものとなり、ここ1~2年に各種の命令と規則から部分的には解決をもたらしはじめている。しかし、必要となるすべての要素を含む包括的な見直しはされてない。オバマ政権はこれを完成するために、これまで以上に注意を払い資源を投入しなければならない。
オバマ政権は以下のような選択肢を持っている。
① 複合的な活動は極力限定し、S&R能力を向上させない政策
② 国防省に、主な業務負担を負わせ続けるという政策
③ 民間委託の増大という政策
④ 予算の増額や新しく担当部局の立ち上げ、さらには既存の省庁間枠組みを改革して文民組織の向上を加速させる政策
①においては、イラクのような介入による戦争は実施しないという選択肢はあるが、大なり小なり他の緊急事態が生じた場合、戦争とは異なり活動を実施しないという選択しはありえない。②は、これまで国防省において軍人は文官的な機能も果たしてきたし、必要に応じて国防省の文官が補ってきたが、軍民格差の是正や効率化の問題は解決されない。③は、民間業者への委託にも限界があり、米国はすでにこの限界を超えている可能性がある。よって、④の選択肢を推励する。どのような能力をどの程度構築すべきか、およびそれをどのように組織し、管理するか、ということが政策の中心課題になる。省庁間に存在する能力格差への是正という課題は、オバマ大統領候補当時によって強調された。彼には、複雑で後半的な地球規模の過大に取り組むため、米国政府を21世紀にふさわしいものへと作り変え、文民組織の能力を強化する機会を作り出すことが期待される。