法学部の6つのゼミによる合同企画として、研修報告会を行いました。
報告会では各ゼミの国内・海外での研修の様子や成果を発表しました。
参加したゼミと日時は以下の通りです。
〇参加ゼミ:木村・後藤・鈴木・多谷・長谷川・山川(法学部 政治・国際政治学科)
〇日時:2008 年10月25日 13:45-17:45
各ゼミからは30分間ずつ、それぞれの夏季の研修の概要から研究の内容、その他準備や観光の様子を報告し、それぞれのゼミが短い時間の中で、ゼミとして持っている問題意識やそれに対する考えを発表しました。
また各ゼミからの報告ごとに質問時間を設けて意見交換も行われ、それぞれが独特の観点によって刺激し合い、問題意識を深めていく機会となりました。
今回はそれぞれ異なった場所で独自の問題意識にもとづいて研究され、それらに基づいて報告が行われましたが、それぞれの問題を考える際にあらゆる視点、研究レベルからの考察が必要であるという事に気付かされるものとなりました。
※配布資料はこちら→10月25日合同ゼミ研修報告会資料
以下は各ゼミによる報告の概要です。
①木村ゼミ(国内)
「イラク戦争 ―アメリカの政策と失敗、イラクの将来―」
木村ゼミからはアメリカとイラクの関係について、イラク戦争とアメリカの失敗という観点から発表して頂きました。
それぞれイラクの地でNGOとして活動している人、ジャーナリストとして活動している人といった、2つの異なる視点からイラク戦争についての研究がされていました。NGOの視点からは、強力な反米勢力による支援の難しさや財源の問題、クルド人問題などが挙げられました。またジャーナリストの視点からは、戦争の失敗の裏側にある原因の追及についても発表されました。
②長谷川ゼミナール
a:バングラデシュ(石澤・篠田・別所)
「バングラデシュの開発に向けた国際援助の役割と実施活動の考察」
長谷川ゼミバングラデシュ班からの発表では、同国の教育とマイクロクレジット事業という2つに焦点をあて、訪問先や日程など準備面の共有も行いました。
まず教育については、同国では初等教育への就学率が90%近くまで進展している一方で、卒業するまで学校を続けられないという問題を挙げました。
これらの原因としては、訓練を受けていない教師による低い教育の質に加え、学校よりも働く事を優先しなければならない子どもの存在があります。
これらに対する配慮としてUNICEFやBRAC(国内最大のNGO)の教育の提供方法を改善する取り組みなどを発表しました。
また、マイクロクレジットの生みの親でもあるグラミン銀行創設者のムハマド・ユヌス氏との対談においては、貧しい女性に対してただお金を貸すだけでなく、生活に対する認識をエンパワーメントする重要性について発表しました。
まとめのセクションでは、バングラデシュにおける開発の方針が「供与」タイプから「能力開発」タイプへ大きく重点が変わってきていることを説明しました。そして今後の課題として援助恩恵の普遍化、最底辺の人々への配慮、オーナーシップの3点が必要であるという事を述べました。
b:東ティモール(古市)
「平和構築の過程から人権・紛争・安全保障・経済・開発・環境における現実の問題を学び、その解決策を探る」
東ティモール班からは、独立戦争からの国内紛争によって大きく開発が遅れ、国連のPKOミッションが入っている東ティモールにおける教育の重要性について発表しました。
東ティモールでは、子供の教育を受けるという権利にとりかかっているUNICEFの久木田代表、日本の国際NGO、KnK(国境なき子どもたち)がサポートしているコモロユースセンター、東ティモール国立大学を訪れました。また、議会の意見として東ティモール首相シャナナ・グスマオ氏に、東ティモールにおいての教育問題の深刻性、重要性を聞きました。
東ティモールで小学校に入学している子供は70%強います。この数はけして世界的にみて多くはありません。
その上、学校が遠い、制服を買うお金がない、先生または生徒によるいじめがあるなどさまざまな理由でそのまま通い続けることをやめなくてはならない子供がたくさんいます。さらに、きちんとした雇用先がないことから、教育に重要性を感じていない人もたくさんいます。しかしながら教育は、基礎教育を学ぶだけでなく、学校に通い続けることにより早期結 婚、早期妊娠を防ぐことに繋がり貧困のサイクルを止めるという大事な役割を果たします。
UNICEFが、ブレインストーミングをして作り上げた、子供目線に立って何が必要かという表を使って、これからは包括的かつ、人間の安全保障の視点からの政策、プロジェクトつくりが重要です。今後の課題としまして、上の点に加えて、教職員を始めとする「人材育成」「雇用の創出」が重要であると述べました。
③多谷ゼミナール(イスラエル・パレスチナ)
「現状を知り、各々の機関における今後の展望を考察する」
多谷ゼミからは、イスラエル・パレスチナ問題についての諸機関や解決策について発表して頂きました。
パレスチナ問題の打開に向けて活動を行うアクターとしては日本大使館、JICA、パレスチナ子どものキャンペーン(NGO)、イブダ文化センターを取り上げました。
イスラエル・パレスチナの問題は、ユダヤ人やアラブ人の中でもそれぞれ土地をめぐる人々の状況によって、統合や分離といった解決策が争われており、特に聖地エルサレムの管理問題の難しさについての報告がありました。
また今後の課題として、パレスチナ人の経済を底上げや、相互理解を含めて平和裏に問題を解決することの重要性が述べられました。
④鈴木ゼミナール(マレーシア)
「アジア太平洋地域の安定に向けたASEAN地域の安定の実現」
鈴木ゼミからは「東南アジア地域の秩序安定」という観点のもと、マレーシア国外務省やISIS(シンクタンク)、UNDP、JICA、JETRO等それぞれのアクターの視点からの考察について発表して頂きました。
発表の中では日本政府とマレーシア政府の戦後処理に対する認識の相違、自由貿易協定(FTA)や経済連携協定(EPA)の効果、国際会議の開催におけるUNDPとJICAの協力等、多角的に東南アジアの安定のための取組についての報告がされました。
⑤山川ゼミナール(タイ・ベトナム)
「多国籍企業が与える経済効果 ―現地に与える影響と日本のメリットデメリット―」
山川ゼミからは日本企業が与える国際経済への効果や影響について発表して頂きました。
タイやベトナムでは味の素、ホンダ、JETRO、アマタベトナム工業団地で、日本国内ではJBICや日興シティホールディングスなどの役割について発表されました。
また、JICAとJBICの円借款部門の統合が与える経済効果として、案件成立の時間短縮や企業との繋がりの強化についても説明されました。
⑥後藤ゼミナール(インドネシア)
「グローバル時代の国際開発協力を考える―インドネシアにおける主要ドナーのパートナーシップを事例に―」
後藤ゼミからは、国際援助機関のパートナーシップの実態について、プロジェクトX風に報告して頂きました。
研修にて技術協力などの無償援助支援を重視した長谷川ゼミと対照的に、日本政府からのODAを含む大規模インフラ案件の視察を多数行った後藤ゼミからは、主要ドナー(JICA、JBIC、WB、ADB、UNDP)における協調融資や補完性などといった関係により、相乗効果が高く持続性のあるプロジェクトが生まれることを説明して頂きました。
またその一方で、ドナー間におけるパートナーシップが単なる「仲良しの協力」ではなく、各機関が全く異なった意図のもとで連携しており、生き残りを賭けた戦略のもとで行われているという点が述べられました。
(文章作成 別所 弘康)